研究課題
基盤研究(B)
本研究では、南極・昭和基地における大気エアロゾル粒子の観測として、直径5から5000nmの粒径分布測定や粒径別エアロゾルの採取、スス粒子濃度の測定、個別粒子の採取などを行った。さらに、物質輸送のトレーサーとして有用なラドン(Rn:主に地殻から)と一酸化炭素(CO:燃焼起源、南半球ではバイオマスバーニングが主たる起源と考えられる)の濃度を測定し、中・低緯度から南極地域への物質輸送について知見を得ることを目的とした。大気観測は、南極への船上観測(オーストラリア〜昭和基地)と昭和基地での通年観測(越冬観測)、航空機をもちいた昭和基地上空の大気エアロゾル観測からなり、空間的な分布を捉えることと、季節変化や季節内変化としてのイベントを押さえることに主眼を置いた。スス粒子濃度やRn濃度の変化から、特に冬から春にかけての低気圧活動に伴って、中・低緯度の物質が南極へイベント的に輸送されていることが示唆された。これら以外にも興味深い現象が幾つか観測された。一つは、極夜の弱風時に、著しく高いエアロゾル濃度が観測された事例である。おそらく海塩粒子が主成分と考えられるが、なんらかの要因で中・高緯度帯の開水面から大規模に発生し、その後穏やかに輸送されてきたことを暗示している。また、春から秋にかけての季節には、南極大気中での新生粒子の生成と成長に関するデータも得られた。本研究により、中緯度からの物質輸送は、特に冬季から春季にかけて活発であるようなデータが蓄積された。今後は、その経路にあたる地点(例えばブーベ島やマリオン島など)で同時に観測し、途上でのエアロゾル粒子の変質の把握、将来的には南極への物質輸送モデルの構築と検証にも使えるようなデータを取得し、南極域への物質循環の橋渡しになるような研究に発展させていきたい。
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