H17年7月に調査航海を実施し、H16年度に設置した係留系の回収及び再設置、CTD・LADCP観測、ならびに船底設置型ADCPによる流動場の測定を行った。また、ノルパックネット・ボンゴネット等による動物プランクトン採集を行い、オキアミ類を抽出し、成長段階毎の水平分布構造を明らかにした。得られたデータの解析の結果、以下の事が明らかとなった。 1.懸架式超音波流速計(LADCP)を用いた流速測定手法を確立した。これにより、沖合域における海洋混合下の中・深層における詳細な流速の鉛直構造が明らかとなった。亜寒帯循環中央部では流れは非常に小さく、北緯40度付近の極前線においては、中層でも10〜20cm/sの東向流速を示す海域が見られた。また、北緯44度付近の亜寒帯循環北部域では、亜寒帯水・対馬暖流水・北部循環水の3つの水塊からなる複雑な海洋構造が見られた。 2.日本海極前線付近を流れる中層循環の流量を0.4SV程度であると推測した。これは過去の知見等と比較すると、妥当な値であると考えられる。 3.冷水性オキアミThysanoessa longipesの幼生・未成体期の水平分布は、海洋循環構造と非常によく一致していた。日本沿岸付近の亜寒帯循環の流速の速い海域では、夏季においてもブルーミング時期が遅いロシア海域からの移流と見られる若い幼生が多量に見られた。このことから亜寒帯循環域には発生時期の異なる冷水性オキアミが混在し、その結果として現存量も多くなっている可能性が示唆された。
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