1.懸架式超音波流速計(LADCP)を導入し、沖合域における水平流速の鉛直構造を詳細に実測した。さらに、船底設置型ADCP・係留系測流・地衡流速等の手法を併せて用いて日本海北部亜寒帯循環域の流動実態を明らかにした。北緯40度付近に存在する極前線上における流量は約2.3SVであったが、多くは津軽海峡から太平洋に流出し、亜寒帯循環として再循環している流量は0.8SV程度と見積もられた。極前線に沿って日本海西部ロシア海域から日本海東部日本領海へ流入する中層水は約0.45SVであった。 2.日本海北部海域の亜寒帯循環における中層循環は、東部の日本領海域では水深約200mに、位置するが西部のロシア海域では海表面に露出しており、表層に存在する動・植物プランクトンを東西方向に水平輸送し、その結果海洋生態系に大きな影響を与えている。特に春季ブルーミングの時期が東西海域で大きく異なる日本海北部海域ではその影響は大きいものと考えられる。この仮説を検証するために、2003〜2005年7月において主要な動物プランクトンの指標として冷水性オキアミ(Thysanoessa longipes)を用いて、生後数十日のカリプトピス期及びファーシリア期幼生の水平分布を調べた。日本海東部ではブルーミングは4〜5月頃に起こるため7月にはカリプトピス幼生はほとんど見られないが、亜寒帯循環の流軸付近にのみ7月においても多数のカリプトピス幼生が見られた。気象条件の多少の差異から各年で分布域が多少異なっていたが、最もブルーミングが遅く始まったと考えられる2005年には北緯40度の極前線西部域に多数の幼生が見られる一方、ブルーミングが早く始まった2003年では亜寒帯循環の北部に相当する北緯43度付近に多数の幼生が見られた。
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