研究課題
本年度の研究状況は、以下の通りである。第一に、生態系の固有価値という環境分野の中で最も根源的な意味を有する概念について、環境倫理学における知見を整理した。第二に、人間と環境の関係性の変化により生じる現象を明晰な形で類型化するためにゲーム理論を用いた。この研究では、既存のゲーム理論で前提とされてきたプレーヤーの一貫性の概念を再検討した。まず、効用関数の変化の仕方に一定の形式を与えることにより、プレーヤーがゲーム中に合併されたり分解されたりするゲームを定式化した。これまでのゲーム理論ではプレーヤー間の提携の形成ないし解消という議論はなされてきたが、複数のプレーヤーが1つのプレーヤーとして再構成されるような定式化はなされていなかった。このモデルをもとに、非協力ゲームの枠組みを用いてゲームの特性を明らかにした。さらに、プレーヤー間での情報の非対称性を仮定し、均衡解への影響を分析した。第三に、上記の成果を生態学の自然科学的知見と総合し、CVM調査のシナリオ作成作業を行った。まず、以上の研究において類型化した人間と環境の関係を被験者に実感をもってシミュレートさせることをめざし、調査の実施方法を検討した。次に、このような複雑な調査の完遂のために不可欠な、被験者の満足感についての研究を行った。このために、東京工業大学大学院社会理工学研究科肥田野研究室が所有するCVM調査のデータを利用して解析を行った。この結果は、2003年度の環境経済・政策学会で発表された。
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