平成16年度を含む過去3年間の結果を以下のようにまとめた。 長良川では2001年11月と2002年5月に上流から下流の河川敷6地点、木曽川では2003年6月に上流から下流の4地点から土壌を採取しPythium属菌を分離した。分離した菌株を形態およびrDNA-ITS領域とシトクロームオキシターゼII(coxII)遺伝子の塩基配列に基づき同定したところ、18種5グループに分類された。分離された菌株の半数以上は、有性器官を形成せず球形のHyphal Swelling(HS)のみを形成する菌株であった。rDNA-ITS領域とcoxII遺伝子の塩基配列から、HS菌株は5系統にわけられ、HS1、2、3の3系統で主に構成されていることがわかった。菌量を比較すると、長良川と木曽川ともP.irregulareは下流に行くに従い多く分離された。また、本菌は植物病原菌であることが知られているので、河川から分離した菌株も病原性があるかどうかを調べたところ、キュウリやトマトに病原性を示した。このことから、農耕地に生息している菌が、川に流れ込んだと考えられ、河川は農業の影響を受けていると考えられた。また、HSグループのうちHS2系統は上流のみに生息し下流にはほとんどいなく、その生育特性は上流の清涼な気候を好む菌ではないことが明らかになった。このことから、比較的人間活動の影響が少ない河川環境に適応して生息しているものと考えられた。以上のことから、Pythium属菌により河川流域の環境評価が可能であることが示唆された。この研究の一部を平成16年度日本土壌微生物学会大会で発表した。 また、分子系統学的手法によりPythium属菌を正確に同定する技術について、Journal of General Plant Pathologyに発表した。
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