これまでの長良川および木曽川の研究で、Pythium group HS2は上流の河川敷に多く分布し、P.irregulareは下流の河川敷に多く分布していることが明らかにした。本年度は筑後川を対象に調査を行ったところ、長良川と木曽川と同様にHS2は上流、P.irregulareは下流に多く生息することが明らかになった。また、HS2およびP.irregulareの菌量と、土壌pH、土性、流域内の各土地利用面積および自然度との関係を調べたところ、HS2の菌量は流域の森林面積および自然度と相関があり、P.irregulareの菌量は、農地面積および自然度と相関があった。一方、HS2とP.irregulareの菌量は共にpHおよび土性とは相関がなかった。さらに、河川敷にHS2の菌量が多い地点の流域の森林土壌からはHS2が多く分離され、P.irregulareの菌量が多い地点の畑地土壌からはP.irregulareが多く分離された。以上の結果より、HS2は森林が多く自然度の高い場所に生息し、P.irregulareは畑地が多く自然度の低い場所に生息することが明らかとなった。このことから、HS2の菌量は河川の自然度評価に、P.irregulareの菌量は農業の河川への影響評価に利用可能であると考えられた。 本研究の一部を第21回日本微生物生態学会で発表した。
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