長良川、木曽川および筑後川を対象に調査を行ったところ、三河川ともにPythium group HS2は上流、P.irregulareは下流に多く生息することが明らかになった。また、HS2およびP.irregulareの菌量と、土壌pH、土性、流域内の各土地利用面積および自然度との関係を調べたところ、HS2の菌量は流域の森林面積および自然度と相関があり、P.irregulareの菌量は、農地面積および自然度と相関があった。一方、HS2とP.irregulareの菌量は共にpHおよび土性とは相関がなかった。さらに、河川敷にHS2の菌量が多い地点の流域の森林土壌からはHS2が多く分離され、P.irregulareの菌量が多い地点の畑地土壌からはP.irregulareが多く分離された。以上の結果より、HS2は森林が多く自然度の高い場所に生息し、P.irregulareは畑地が多く自然度の低い場所に生息することが明らかとなった。このことから、HS2の菌量は河川の自然度評価に、P.irregulareの菌量は農業の河川への影響評価に利用可能であると考えられた。 P.irregulareをPCRにより検出するためのプライマーの設計を試みた。ゲノムのDNAを任意に増幅するRAPD-PCR法による近縁種との増幅産物の比較からそれぞれに特異的な増幅産物を得た。特異的な増幅産物の塩基配列をTAクローニングにより調べ、プライマーを設計した。しかし、特異的なプライマーを設計することはできなかった。PCRに変わる高感度な検出法として開発されているLAMP法についても特異的増幅産物の塩基配列に基づいてプライマーを設計し、特異性を調べたが、特異的は増幅には至らなかった。
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