研究課題/領域番号 |
15310027
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
丸田 恵美子 東邦大学, 理学部, 助教授 (90229609)
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研究分担者 |
長谷川 雅美 東邦大学, 理学部, 助教授 (40250162)
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キーワード | エンボリズム / 開葉フェノロジー / Fagus crenata / Quercus crispula / 亜高山帯針葉樹林 / 樹液流 / フェノロジカル・ギャップ / 水分ストレス |
研究概要 |
平成17年度は、特に冷温帯と亜高山帯の優占樹種の冬季〜春における水分収支と環境との関連について成果を得ることができ、この時期の水分収支の特性がそれぞれの自生地(太平洋側、日本海側、高標高域)の環境によく適応していることを明らかにした。 1.冷温帯樹種 太平洋側山地では、ブナは5月初旬には開葉が完了するのに対し、ミズナラはずっと遅く6月中旬頃である。このような開葉フェノロジーの違いは、両種の冬季の水分特性から説明できる。環孔材樹種で大きな直径の道管をもつミズナラでは12月に木部が凍結するようになると、気泡が入り通道能力を失う。春になっても通道能力は回復することなく吸水が開始されないため、冬芽に水が供給されず開葉もできない。ミズナラの開葉は、当年の新しい木部が形成されて、そこを通じて吸水が開始される5月下旬から6月となる。一方、ブナでは導管径が小さいので、冬季もある程度は通道能力を維持しており、さらに土壌凍結が融けるとすぐに根圧が発生し、水あげが始まる。そのため春の早い時期から開葉準備が始まり、5月初旬には開葉が完了する。このような開葉時期の違いによって、ミズナラの林床では、4月〜5月にはフェノロジカル・ギャップとなって、林床のブナの実生の成長を促進していることがわかった。 2.亜高山帯 亜高山帯の常緑針葉樹は、冬季には土壌が凍結して吸水ができないが、常緑葉からはクチクラ蒸散が続き、深刻な水分ストレスにおちいるといわれてきた。しかしそのメカニズムを実証する手法がなかったが、本研究において幹・枝の樹液流と貯水量を測定する手法を開発することができ、定量的に説明することができた。このことによって、各地の亜高山域における常緑針葉樹の冬季の水分収支をモデル-シミュレーションにより予測することができるようになった。
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