ディーゼル排気微粒子が糖尿病とその合併症に及ぼす影響とメカニズム解明に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15310030
• 研究機関: 独立行政法人国立環境研究所
• 研究代表者: 高野 裕久 独立行政法人国立環境研究所, 環境ホルモン・ダイオキシン研究プロジェクト, 総合研究官 (60281698)
• 研究分担者: 吉川 敏一 京都市立医科大学, 医学部, 教授 (90158410)
• キーワード: ディーゼル排気微粒子 / 糖尿病 / 合併症 / 生活習慣病 / 動脈硬化 / 呼吸器障害 / 感染症 / 大気汚染物質

研究概要

ディーゼル排気微粗子(DEP)による感染性肺傷害の増悪とメカニズムの解明に関する研究.
DEPとグラム陰性桿菌由来の細菌毒素(lipopolysaccharide)もしくは真菌菌体成分(βグルカン)を、単独あるいは併用してマウスに経気道暴露した。細菌毒素の経気道暴露により好中球を主体とする気道炎症と肺水腫が惹起されたが、DEPの併用暴露によりこれらは顕著に増悪した。今回実験に用いた量のDEP単独では、ほとんど傷害は惹起されなかったDEPによる細菌毒素関連急性災症性肺傷害の増悪効果は、炎症性サイトカイン(IL-1等)、ケモカイン(MIP-1,IL-8,MCP-1等)、Toll-like receptorの局所発現や肺におけるNF-kappaBの活性化とよく相関していた。また、DEPによる炎症性肺傷害の増悪効果は、脂溶性溶媒により可能な限り有機化学物質を除去した残査粒子に強く観察され、抽出された化学物質にはあまり観察されなかった。炎症性蛋白の変動も傷害の強度と同様の結果を示した。一方、βグルカンの経気道暴露により、好中球と好酸球を主体とする炎症性傷害が誘導されたが、この病態はDEPによっては修飾されなかった。
ディーゼル排気暴露が各種糖尿病モデルにおよぼす影響と感受性の相違に関する研究
自然発症、肥満、糖尿病ラットを用いた実験では、ディーゼル排気(DE)暴露による糖尿病の発症や血管合併症進展の修飾は、暴露32週目までは、認められなかった。現在、暴露期間を延長して検討を続行してしている。また、自然発症、肥満、糖尿病マウスを用いた暴露実験も開始しており、今年度末から来年度早々にかけて解剖の上諸検討を行う。

研究成果

• [文献書誌] Sanbongi C, Takano H, et al.: "Rosmarinic acid inhibits lung injury induced by diesel exhaust particles."Free Radic.Biol.Med.. 34. 1060-1069 (2003)
• [文献書誌] Ichinose T, Takano H, et al.: "Differences in airway-inflammation development by house dust mite allergen and diesel exhaust inhalation among mouse strains."Toxicol.Applied.Pharmacol.. 187. 29-37 (2003)
• [文献書誌] Yanagisawa R, Takano H, et al.: "Enhancement of acute lung injury related to bacterial endotoxin by components of diesel exhaust particles."Thorax. 58. 605-612 (2003)
• [文献書誌] Ichinose T, Takano H, et al.: "Mouse strain differences in eosinophilic airway-inflammation caused by intratracheal instillation of mite allergen and diesel exhaust particles."J Appl.Toxicol. in press.
• [文献書誌] Takano H, et al.: "Nitrogen dioxide air pollution near ambient levels is an atherogenic risk, primarily in obese subjects."Exp.Biol.Med.. in press.