我々のグループは、CYP1A1の誘導機構のひとつとして、リガンド非依存性のAhレセプター活性化による新しい機構を見い出し報告してきた。この新しいCYP1A1の誘導機構は、チロシンキナーゼの阻害剤によりブロックされるが、Ahレセプターのアンタゴニストでは阻害されない性質を持っていた。さらに、ベンズイミダゾール化合物によるCYP1A1誘導発現における、マウスとヒトの種差を利用して、ヒトの責任遺伝子のひとつをクローニングした。 同定された遺伝子はCREM2(cAMP responsive element modulator2)であった。しかしながら、CYP1A1遺伝子のプロモーター領域には、CRE配列が存在していなかった。そこで、CYP1A1の調節領域のシスエレメントを同定するために、ルシフェラーゼの発現をCYP1A1プロモターで調節できるレポーター遺伝子を作製し、マウスHepa1c1c7細胞にトランスフェクションすることを行った。プロモーター領域を狭めいくことにより、最終的に8ヌクレオチドに集約される配列を決定することができた。この配列は、CREではなく、いままでに報告されていない新しいシスエレメントであることから、未知の因子が結合し、さらにその因子がCREM2.と複合体を形成している可能性が考えられる。 来年度の実験計画としては、この新しいシスエレメントに結合する因子が存在する可能性を検討するために、EMSA法を用いて調べていく。
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