研究概要 |
1977年から2001年までの間に本研究代表者らが原爆被ばく試料(1kg〜20kg)から化学的に粗分離した希土類フラクンョンについて,ユ-ロピウム(Eu)-152残留放射能が低いものを優先してEuの高純度化(アクチニウム(Ac)の除去に主力を注ぐ)を行う方針で本研究を開始した。 平成15年度は,長崎原爆の爆裂点から直線距離1595mの位置で被ばくしたコンクリート製建造物試料から得ていた粗製希土類フラクションについてEuの高純度化を行った。すなわち,約19kgのコンケリート柱状試料(1997年に採取)の骨材(安山岩)約7.8kgから化学分離(1998年〜2001年)によって得られていた約54gの粗製希土類フラクション(Ac-227の娘核種による妨害のため,Eu-152の高確度定量が達成されていない)について,アルカリ溶融による全分解,沈殿法とイオン交換樹脂カラム法による主要元素の除去,硝酸系でのジ(2-エチルヘキシル)リン酸(HDEHP)による溶媒抽出を順次行い,Euの精製を行った。分離精製過程における元素分析(Euが所期のフラクションに回収されていること及び除去対象元素・核種がEuフラクションから除去されていることの確認)のために蛍光X線分析,中性子放射化分析,光量子放射化分析,ICP-MS分析,γ線スペクトロメトリー,α線スペクトロメトリーを行った。 コンクリート柱状試料(約19kg)→安山岩試料(約7.8kg)→粗製希土類フラクション(約54g)→精製Euフラクション(約0.2g)と分離精製を進めた結果,Ac-227等の妨害放射性核種をほとんど含まないEuが1.9mg得られた。化学分離前の安山岩試料に含まれるEu(7.4mg)の約26%が精製Euとして回収されたことになる。精製Euフラクションの極低レベルX線/γ線スペクトロメトリーを予察的に約1カ月間行った結果,他核種のX線/γ線の妨害をほとんど受けることなく極微弱なEu-152放射能を定量できることが分かり,3〜12カ月の長期測定を開始した。
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