研究概要 |
長崎原爆の爆裂点から直線距離1595mの位置の中性子束を評価するために,被ばくコンクリート試料約19kgから化学分離したユーロピウム(Eu)フラクションを用いてEu-152(半減期13.542年)の比放射能(Eu-152/Eu)を求めるための超微弱Eu-152残留放射能の測定を続けている。その残留放射能測定の過程で明らかになった種々の問題点について,平成15年度・同16年度に引き続いて順次検討を行った。すなわち,精製Euフラクションを測定試料として最も感度が高いサマリウム(Sm)K-X線(40.124KeV,39.523keV)によってEu-152放射能を測定するとき,まずアクチニウム(Ac)-227の妨害が顕著であったためAcの分離除去法とその適用を検討してEuの高純度化を行った(平成15年度)。次に,測定試料によるSm K-X線の自己吸収に注意を要するばかりでなく,それ以上に,測定試料に含まれるSmが測定試料に含まれる放射性核種からのアルファ線・ベータ線によって蛍光X線(SmのK-X線)を発生してEu-152の定量を妨害していることが明らかにした。Euの回収率を低下させずにSmを化学的に分離除去することは極めて困難なので,アルファ線・ベータ線によるSmのK-X線(蛍光X線)発生量を定量的に把握することとし,平成16年度においてアルファ放射体とSmの共同効果による妨害に関する検討を開始した。平成17年度は,ベータ放射体とSmの共同効果による妨害に関する検討を開始した。アルファ線の強度とエネルギー,ベータ線の強度とエネルギーを変量とするSm K-X線発生量について詳細な検討を続けている。
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