研究概要 |
本研究では,酸化DNA損傷修復に関わる塩基除去修復酵素の反応機構に基づくトラップと酵素特性解析を行い,修復ネットワークを明らかにすることを目的とする。本年度の実績を以下に示す。 1.酵素トラップ基質の合成 反応機構に基づく酵素トラップを行うには,2-deoxyribonolactone(dL)およびoxanine(Oxa)を含むオリゴヌクレオチドが必要である。dLについては,7-nitroindoleで保護したdL-phosphoramidite monomerを用いオリゴヌクレオチドを合成後,紫外線照射により脱保護基し,dLを含む基質を合成した。Oxaについては,2'-deoxyoxanosine 5'-triphosphateを合成し,これを基質としたDNAポリメラーゼ反応により,Oxaを含む基質を合成した。 2.酵素トラップ条件の検討 dLあるいはOxaを含む基質をHeLa細胞粗抽出物とをインキュベートし,生成物をSDS-PAGEで分離した。DNA-修復酵素クロスリンク生成物を定量し,反応条件の影響を検討した。dLおよびOxaいずれの場合も,5種類以上のクロスリンク生成物が認められ,クロスリンクしたタンパクの分子量は,16-72kDaと予想された。各クロスリンク生成物の生成量は,異なった塩濃度依存性を示した。 3.塩基除去修復酵素の特性解析 大腸菌における酸化ピリミジン損傷修復酵素は,Endo IIIとEndo VIIIである。これらの酵素のヒトホモログの損傷特異性を検討した。hNTH1(Endo IIIホモログ)は,thymine glycol立体異性体のうち,5R-体を選択的にDNAから除去するのに対し,hNEIL1(Endo VIIIホモログ)は,5R-体および5S-体を同程度の効率で除去することが明らかとなった。
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