研究概要 |
1.新規な塩基損傷修復機構とネットワーク解明 大腸菌Endo IVはAP endonucleaseであり,塩基損傷は認識しないと考えられていた。Endo IVおよびその酵母ホモログであるApn1の塩基損傷に対する活性を調べた結果,両酵素がalpha-deoxyadenosine,5-hydroxyuracil, dihydrouracil等を認識し,損傷の5'側のホスホジエステル結合を切断することが明らかとなった。Endo IVおよびApn1により開始されるヌクレオチド切断修復は,新規な塩基損傷修復機構であり,細胞内おいてこれまでに知られている塩基除去修復機構と相補的に働いている可能性が示唆された。 2.DNAグリコシラーゼの特性解析 これまでの研究で,ヒトSMUG1が5-formyluracil,5-hydroxymethyluracil等の酸化DNA修復において主要な役割を持つDNAグリコシラーゼであることを明らかにした。SMUG1の特性をさらに詳細に解析する目的で,部位特異的アミノ酸置換による一連の変異体タンパクの作製と構造モデリングを行った。その結果,触媒活性および損傷認識に関わるアミノ酸残基が同定され,同酵素の作用機序が明らかとなった。 3.酵素トラップを用いた新規DNAグリコシラーゼの同定 修復酵素トラップ反応を行うための2-deoxyribonolactone(dL)およびoxanine(Oxa)を含むオリゴヌクレオチド基質の大量合成が完了し,これを用いてDNAグリコシラーゼの同定のためのトラップ反応を行った。HeLa細胞粗抽出物を用いてトラップされたタンパクを分離精製し,同定を行っている。
|