研究課題/領域番号 |
15310041
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
鰐渕 英機 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (90220970)
|
研究分担者 |
魏 民 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70336783)
|
キーワード | ヒ素 / 酸化的DNA障害 / 発がん性 / DMA / MMA / TMAO / 膀胱粘膜上皮 / cDNAマイクロアレー法 |
研究概要 |
無機ヒ素代謝産物であるモノメチルアルソン酸(MMA)、ジメチルアルシン酸(DMA)、トリメチルアルシンオキサイド(TMAO)のラット肝発がん促進作用、膀胱発がん促進作用を明らかにしてきている。また、その発がん機序の一つにヒ素による酸化的DNA傷害が関与していることを報告した。本研究では、MMA、DMA、TMAOのこれらの作用の機序を明らかにするため、F344ラット雌雄に13週間、100ppmAsの濃度で飲料水投与し、膀胱粘膜の走査電子顕微鏡的解析と膀胱粘膜および肝臓の遺伝子発現をcDNAマイクロアレー法を用いて、網羅的解析を行った。膀胱粘膜表面の病理学的所見では、ropy microriddges、pitting、increased separation of epithelial cell、exfoliation、necrosisなどの所見がいずれの群でも見られたが、特にDMA投与の雌で強く見られた。尿中ヒ素代謝産物を分析した結果、遺伝子傷害性があると考えられているDMA(III)が、特に、DMA投与雌ラットで有意に認められた。また、膀胱粘膜の遺伝子発現では、MMA、DMA、TMAO投与により発現異常がそれぞれ認められたが、DMA>MMA>TMAOであり、雌>雄であった。特に、DMA投与群では、GST-Ya、Cyclin D1、Ubiquitin DとMatrix metalloproteinase 13の過剰発現をRT-PCR法で確認した。これらのことより、DMA投与により特に雌ラットにおいて多くの遺伝子発現異常が生じるとともに、膀胱粘膜傷害が惹起されていることが明らかとなった。また、肝臓においてはMMA、DMA、TMAO投与の各群において比較的共通の遺伝子発現異常が見られた。しかし、TMAOにおいて、特にGST-Ya2、TGF-α、Cyclin D1、VEGFの遺伝子発現の亢進が見られ、TMAOの肝発がん性との関連性が注目された。以上の結果より、DMAおよびTMAOの膀胱発がん性あるいは、肝発がん性に酸化的DNA傷害、xenobiotic metabolizing enzymesとangiogenesisが関与している可能性が示唆された。
|