環境中の化学物質のゲノムレベルでの影響評価

2004 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 15310043
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 一般
• 研究分野: 放射線・化学物質影響科学
• 研究機関: 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設) (2004); 岡崎国立共同研究機構 (2003)
• 研究代表者: 渡邉 肇 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 助教授 (80212322)
• 研究分担者: 井口 泰泉 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (90128588)
• 研究期間 (年度): 2003 – 2004
• キーワード: エストロゲン / 化学物質影響 / 内分泌攪乱 / ノニルフェノール / DNAマイクロアレイ

研究概要

環境中の化学物質は、様々な局面でヒトを含めた生物に影響を及ぼしていることが示されてきている。そうした中で、ステロイドホルモン様活性を有する化学物質の影響が問題視されて久しいが、化学物質が実際にどの程度、生理的なホルモン影響を模倣できるのかについては不明な点が多く残されていた。
そこで本研究では、化学物質影響をゲノムレベルで明らかにすることを目的として、化学物質が遺伝子発現に及ぼす影響を解析し、さらにその遺伝子発現制御の作用機序を明らかにするために、ホルモン受容体のゲノムDNAへの作用を解析した。このために、まず生理的なエストロゲンであるエストラジオールを中心として、ノニルフェノールをはじめとしたホルモン作用を有すると考えられる化学物質について、遺伝子発現への影響を解析した。
さらに、ホルモン作用におけるゲノムDNAへの作用を明確にするために、マウスにエストロゲンを投与し一定時間後に子宮を摘出し複合体を架橋した後に、抗エストロゲン受容体抗体を用いて、エストロゲン受容体-DNA複合体を回収した。回収した複合体の架橋を切断し遊離したDNAを増幅する事により、エストロゲン受容体が直接に結合しているゲノム断片の同定を行うことができた。また、これと並行してエストロゲン投与後、一定時間後に子宮や肝臓を摘出し、各組織からmRNAを精製しエストロゲン投与により誘起される遺伝子発現変化について解析した。さらに、これら遺伝子発現変化を化学物質投与により誘起される遺伝子発現変化と比較を行うことによりエストロゲン作用と化学物質影響の差異について検討した。
その結果、ホルモン様作用を有する化学物質は遺伝子発現変化において非常に類似した影響を及ぼすものの、個々の遺伝子についてはその活性化の程度が異なること、また標的臓器が異なるとその影響の度合いも異なることなどを明らかにした。

研究成果

• [雑誌論文] Selective ligand purification using high-performance affinity beads (2004)
  • 著者名/発表者名: Ohtsu Y. et al.
  • 雑誌名: Analytical Biochemistry 338 ページ: 245
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Comparative uterine gene expression analysis after dioxin and estradiol administration. (2004)
  • 著者名/発表者名: Watanabe H. et al.
  • 雑誌名: Journal of Molecular Endocrinology 33 ページ: 763
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Estrogen-independent activation of ErbBs signaling and estrogen receptor a in the mouse vagina exposed neonatally to diethylstilbestrol (2004)
  • 著者名/発表者名: S.Miyagawa et al.
  • 雑誌名: Oncogene 23 ページ: 340
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Persistent gene expression in mouse vagina exposed neonatally to diethylstilbestrol (2004)
  • 著者名/発表者名: S.Miyagawa et al.
  • 雑誌名: J Mol Endocrinol. 32 ページ: 663
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Tissue-specific estrogenic and non-estrogenic effects of a xenoestrogen, nonylphenol (2004)
  • 著者名/発表者名: H.Watanabe et al.
  • 雑誌名: J Mol Endocrinol. 33 ページ: 243
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Comparative uterine gene expression analysis after dioxin and estradiol administration (2004)
  • 著者名/発表者名: H.Watanabe et al.
  • 雑誌名: J Mol Endocrinol. 33 ページ: 763
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] Selective ligand purification using high-performance affinity beads (2004)
  • 著者名/発表者名: Ohtsu Y., Ohba R., Imamura Y., Kobayashi M., Hatori H., Zenkoh T., Hatakeyama M., Manabe T., Hino M., Yamaguchi Y., Kataoka K., Kawaguchi H., Watanabe H., Handa H.
  • 雑誌名: Analytical Biochemistry 338 ページ: 245-252
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] Comparative uterine gene expression analysis after dioxin and estradiol administration. (2004)
  • 著者名/発表者名: Watanabe H., Suzuki A., Goto M., Ohsako S., Tohyama C., Handa H., Iguchi T.
  • 雑誌名: Journal of Molecular Endocrinology 33 ページ: 763-771
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] Effects of 17b-estradiol, nonylphenol, and bisphenol-A on developing Xenopus laevis embryos. (2004)
  • 著者名/発表者名: Sone K., Hinago M., Kitayama A., Morokuma J., Ueno N., Watanabe H., Iguchi T.
  • 雑誌名: General and Comparative Endocrinology 138 ページ: 228-236
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] Role of foxj1 and estrogen receptor alpha in ciliated epithelial cell differentiation of the neonatal oviduct. (2004)
  • 著者名/発表者名: Okada A., Ohta Y., Brody S.L., Watanabe H., Krust A., Chambon P., Iguchi T.
  • 雑誌名: Journal of Molecular Endocrinology 32 ページ: 615-625
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] Persistent gene expression in mouse vagina exposed neonatally to diethylstilbestrol. (2004)
  • 著者名/発表者名: Miyagawa S., Suzuki A., Katsu Y., Kobayashi M., Goto M., Handa H., Watanabe H., Iguchi T.
  • 雑誌名: Journal of Molecular Endocrinology 32 ページ: 663-677
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] Tissue-specific estrogenic and non-estrogenic effects of a xenoestrogen, nonylphenol. (2004)
  • 著者名/発表者名: Watanabe H., Suzuki A., Kobayashi M., Lubahn D., Handa H., Iguchi T.
  • 雑誌名: Journal of Molecular Endocrinology 33 ページ: 243-252
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] Evaluation of Estrogenic Activity in Diets for Experimental Animals Using in Vitro Assay. (2004)
  • 著者名/発表者名: Kato H., Iwata T., Katsu Y., Watanabe H., Ohta Y., Iguchi T.
  • 雑誌名: Journal of agricultural and food chemistry 52 ページ: 1410-1414
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [図書] 生体統御システムと内分泌攪乱化学物質(井上達・井口泰泉編) (2005)
  • 著者名/発表者名: 渡邉 肇
  • 総ページ数: 321
  • 出版者: シュプリンガーフェアラーク出版
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より