研究課題
基盤研究(B)
NP95は、マウス胸腺細胞においてS期特異的に発現する核蛋白として発見された。この遺伝子を欠損するマウスES細胞では、X線、UV、MNNG、hydroxyurea(HU)の細胞致死作用において2-3倍程度の高感受性を示す。またその遺伝子欠損は姉妹染色分体交換の自然発生頻度を約2倍上昇させることから、この遺伝子産物が、損傷DNAなどによって引き起こされる複製点の停止を再活性化する働きを担う可能性が示唆された。これらの性質がヒト体細胞おいても適用されるかどうかは不明であった。この点を解明するために、マウスNp95のヒトホモログ(hNp95)cDNAの分離を行い、このantisense cDNAをヒトHEK293及びWI-38細胞に導入してhNp95ノックダウンヒト細胞を作成した。これらの細胞の解析からヒトNP95蛋白質もまた、放射線等によるDNA損傷やHU等によるDNA複製進行阻止に対して防御的に機能することが明らかとなった。またhNP95ノックダウンHEK293細胞を用いて突然変異誘発特性を解析した。Na/K依存ATPase遺伝子上の塩基置換型突然変異をウアバイン抵抗性として検出したところ、自発誘発変異体の形成は、非ノックダウン細胞にくらべ約20倍の高頻度であった。これは先にマウスESノックアウト細胞で確認された6TG抵抗性指標での彷徨試験において約30倍の亢進が見られたことに対応する。さらにhNP95の生化学的な性質を特定する目的で、hNP95蛋白を精製するとともに特異抗体を作製した。得られた抗体を使用してX線照射後のHEK293細胞におけるhNP95の局在性を調査した。照射細胞では、hNP95の一部がDNA切断部位を示すγ-H2AX蛋白質のシグナルと重なる一方、他の部位への集積も確認された。hNP95は、二本鎖切断部位近傍に加えて、他のDNAあるいはクロマチン構造と相互作用することが示唆された。精製したhNP95を用いた解析より、hNP95がDNAの特異な構造に対して協同的に結合し、結果として沈降性の巨大な複合体を形成することが見出された。この相互作用は、DNAあるいはクロマチン上におけるNP95の特徴的な会合様式を示しており、DNAを含む高次構造体形成への関与を示唆する。
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Radiation Research (in press)