研究概要 |
本研究では,3港湾で直立護岸と港内の沈降粒子および堆積物を比較し,直立護岸における底質環境の特徴を抽出した.さらに,懸濁物食生物の摂餌,排泄行動から直立護岸による環境悪化のメカニズムについて検討を行った.また,懸濁物を起点とした物質循環の改善を促すことを目的とした実証構造物の貧酸素改善効果について検討した.以下に本研究で得られた主要な結果を要約し述べる. 1)直立護岸における沈降粒子のPOC Fluxは港内よりも大きいことがわかった.また,堆積物の有機物濃度,AVSは港内よりも直立護岸で高く,底質環境が悪化していることがわかった. 2)ムラサキイガイおよびマガキの排泄物は沈降粒子と比較すると有機物濃度が高いことがわかった.また,直立護岸の沈降粒子には排泄物が含まれており,直立護岸においては底質環境悪化の要因となることが示唆された. 3)小松島港,尼崎港において直立護岸壁面の生物相は懸濁物食生物が卓越していた.小松島港では優占種であるムラサキイガイ,マガキの同化量は小松島港全体における一次生産量の1/50に相当することが推定された.一方で,二枚貝の排泄量は脱落量よりも大きく,堆積物食生物による捕食はわずかであるため,直立護岸では排泄物を起点とした物質循環が滞っていると考えられた. 4)水柱における沈降粒子由来の酸素消費量は港内で約15%,直立護岸で約33%であり,直立護岸では沈降粒子による酸素消費量の割合が増加することがわかった.さらに,呼吸量などを含めると直立護岸における酸素消費の多くは懸濁物食生物由来であることが示唆された. 5)実証構造物A, Bは前方における沈降粒子の酸素消費を直立護岸と比較してそれぞれ33,29%削減できることがわかった.また,小松島港に実証構造物Aを適用した場合,1.6kgO2/day削減可能であると推定された.
|