研究概要 |
本研究は、廃木質バイオマスを原料とする液化木材を化学反応前駆体として用い、高付加価値なエポキシ系樹脂を新規に合成すること、ならびに該樹脂をマトリックスとする複合材料を調製することを目的とする。 液化反応溶媒として、1,6-ヘキサンジオール,フェノール,レゾルシノールを用いた。各溶媒との反応による木材液化の後、アルカリ触媒下にて水酸基とエピクロロヒドリンを付加する反応経路により、液化木材を原料とした木材エポキシ樹脂合成を試みた。合成条件検討の結果、副反応の抑制(反応温度制御および反応系の均一化)により溶媒不溶物の生成が著しく抑制され、木材エポキシ樹脂の合成条件を確立できた。 合成樹脂には、液化溶媒1分子中のフェノール性水酸基の量が増えるにつれ、木材液化エポキシ樹脂中のエポキシ基含有量が増える傾向が認められた。この傾向は、硬化剤と混合し加熱硬化させた架橋樹脂の動的粘弾性挙動にも反映された。すなわち、1,6-ヘキサンジオール液化木材エポキシ樹脂やフェノール液化木材エポキシ樹脂からは動的粘弾性試験の貯蔵弾性率のゴム状平坦領域ゴム状平坦領域が出現する架橋硬化物は得られなかったが、反応溶媒1分子に2つのフェノール性水酸基を有するレゾルシノール液化木材エポキシ樹脂からは明確なゴム状平坦領域を有する架橋樹脂が得られた。市販エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂Ep828)を同硬化剤と反応させ得られた架橋樹脂と比較すると、架橋密度・耐熱性(ガラス転移温度)とも低めであるが、一方で、室温における貯蔵弾性率が市販エポキシ樹脂の2倍近くあることが特徴である。 高樹脂弾性率であることは、繊維強化複合材料用マトリックス樹脂として用いた場合に、圧縮強度や曲げ強度の向上に有利と考えられる。今後、合成樹脂をジュート・亜麻や竹のような天然植物繊維あるいは鉱物繊維と上記木材エポキシ樹脂を組み合わせ、新規な天然素材型複合材料を創出するとともに、樹脂そのものの架橋密度・耐熱性の向上も試みる。
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