研究概要 |
野菜畑にリン酸肥料を施用し(0kg/10a,5kg/10a,20kg/10a,50kg/10a),土壌中の可給態リン酸濃度の変化を調査した.施用量が増えるほど土壌中の可給態リン酸濃度は高くなった.しかし,施用してから3ヶ月経つと20kg施用区以下では可給態リン酸濃度が低下し,リン酸濃度に違いがなくなった.一方,50kg区では施用から3ヶ月経ても可給態リン酸濃度はあまり低下しなかった.次に50kg区の畑で畑の端からどれくらい離れると土壌の可給態リン酸濃度が低下するか調査した.その結果,施用直後でも3ヶ月経っても畑の端から50cm離れたところでは土壌の可給態リン酸濃度の上昇がみられなかった.このことからリン酸肥料を施用した場合,畑以外の土壌の可給態リン酸濃度が高まることはないものと考えた.リン酸肥料を施用した畑と施用しない畑の中から土壌溶液を採取して,リン酸肥料の施用が土壌溶液中のリン酸濃度にどのような影響を及ぼすか調査した.その結果,リン酸肥料を施用してもしなくても土壌溶液中のリン酸濃度に違いはなかった.このことからリン酸肥料を施用しても土壌溶液中にリン酸が溶け出し周辺の河川に流れ出す量は少ないと考えられた. 全国約170箇所の畑土壌を採取し,土壌中のアーバスキュラー菌根菌胞子数を調査した.その結果,全国平均の胞子数は風乾土1gあたり2.0個胞子があることが明らかにされた.採取した土壌のいくつかの土壌をポットに詰めダイズやインゲンマメの根に菌根菌がどの程度感染するかみたところ,土壌中の胞子数が多い土壌ほど感染率も高くなることが明らかになった.さらにこれらの土壌に胞子を接種すると感染率はさらに高まった.このことは何らかの方法によって土壌中の胞子数を多くすれば畑で栽培している作物の根における菌根菌感染率を高めることができると考えた.
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