研究概要 |
循環型社会の創製にはリサイクルが重要となる.回生原料中には分離不能、あるいは分離に大量のエネルギーが必要な不純物が存在することが多く、問題となっている。従来のリサイクル研究では、いかに不純物を取り除くかにあったが、本研究では発想を転換し、不純物を無害化さらには特性改善因子として積極的に利用できるプロセスの開発を目指す。本研究では鉄スクラップ中への銅やアルミニウムが多く混入した材料およびアルミニウムスクラップに鉄が混入した材料のリサイクル技術の開発を目指した。 銅含有鉄スクラップ利用では、銅がナノオーダーで微細に分散した急速凝固粉末を作製し,この粉末を銅の液相が生じない873-1273Kで圧延強加工により固化成形した。銅を封じ込めた状態で成形することで高強度材が創製できた.この強化機構は急速凝固粉末による組織の微細化と銅が入ることによる析出効果および再結晶によって形成された非常に微細な結晶組織を持つことで強化されることが明らかになった。 アルミニウム含有鉄スクラップ利用では、鋳鉄中にアルミニウムを添加することで、耐摩耗性,高温酸化特性や制振性など多くの特性が向上することを明らかにした。これら特性のうち制振性を重点に評価した結果,アルミニウム含有量が6mass%のものが特に制振性が優れていることがわかった。 アルミニウムスクラップに鉄が混入した材料では、鉄の化合物が粗大針状に晶出する。これに超音波振動を付加することにより、微細粒状化できることが明らかになった。また,凝固時の時間を長くして初晶として晶出した金属間化合物を重力偏析で,材料の一部に集中させることができた. このように,スクラップ中に入った不純物を特性改善因子として利用するプロセスを開発することができた.
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