環境残留性や生体蓄積性が懸念されているパーフルオロオクタン酸(ペルフルオロオクタン酸C_7F_<15>COOH ; PFOA)をはじめとする水中のパーフルオロカルボン酸類(PFCAs)について、直接光分解、過酸化水素(OHラジカル)、ヘテロポリ酸光触媒(H_3PW_<12>O_<40>)、過硫酸イオンの4つの光化学的な手法で分解させることを検討した。その結果、ペンタフルオロプロピオン酸(C_2F_5COOH)のような短鎖PFCAsは紫外光照射(直接光分解)では分解しなかったが、PFOAのような長鎖化合物になるとゆっくりと分解し、気相中に二酸化炭素、水相中にフッ化物イオンが生成した。また、水相中にはC_6F_<13>COOH、C_5F_<11>COOH等の短鎖PFCAsも検出された。質量数18の酸素からなる水を用いた実験により生成物中の酸素原子は媒体である水に由来していることがわかった。過酸化水素を使用した場合は直接光分解の場合よりも反応性は低かった。H_3PW_<12>O_<40>を用いた場合、PFCAsの分解が高効率に起こった。例えばPFOA分解の初期速度は直接光分解の場合の3倍となり、生成物中の全フッ素分のうち、フッ化物イオンの割合は97%となりフッ化物イオンへの選択性も飛躍的に増加した。過硫酸イオンを用いた場合、その光分解で反応性が高い硫酸イオンラジカルが発生し、PFCAsの分解と同時に硫酸イオンが生成した。この場合、PFOA分解の初期速度は直接光分解の場合の11倍となった。これらの結果により、従来1000℃以上の高温での熱分解の他に分解法が知られていなかったPFCAsについて、ヘテロポリ酸光触媒や、過硫酸イオンを光酸化剤として用いるという手法により室温で高効率にフッ化イオンまで分解できることを明らかにした。
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