研究概要 |
有機無機ハイブリッド型ナノ微結晶作製技術基盤の詳細な高度化を主眼として,1.II-VI族CdSe/TOPO系ナノ微結晶の高品位化(発光量子効率の増大) 2.形状制御(球形→棒状)の手法開発 3.走査型レーザー顕微鏡装置の高度化(画像計測機能の付与,極低温対応)の各項目に取り組み,概ね初期の目標を達成した。1.に関しては,主配位溶媒TOPOに対するHDAの混合に加え,合成シークエンスの詳細な見直しをした。特に合成後半の温度プロファイル(e.g.≧250℃で終了)の検討を行い,CdSeコアのみで40%を越える発光量子効率を達成した。これに伴い,不完全な逆ミセル構造の配位分子による封止層をかい潜ってZnS積層膜を付けてシェル構造にすることでむしろ量子効率が減少する問題が派生したが,配位性能を各合成段階で選択・調整することで克服し,発光効率は最大70%に達しつつある。再現性の確保が次なる問題である。量子効率の評価には相対評価法を用いているが,これについても精度の向上を図った。2.については,酸化物CdOを原料とし一部有機酸系の配位溶媒にすることで,概ね類似の反応条件下でアスペクト比2.6程度の棒状形状が得られることをSTEM観測により直接確認できた。3.に関しては,光学系や光検出器の高度化等抜本的な改良を進めると共に,走査計測に加えて画像計測に向けた準備を整えた。本計測系を用い,単一のナノ微結晶の場合及び相互には独立ながら1,000個程度のナノ結晶を含む二種類の試料に対し,単一系に固有な明滅現象を中心に光物性評価を開始した。この過程で,光照射に伴う発光強度の増大効果を見出した。多くの光材料で光劣化が通常である中で極めて新規な現象であり,その機構を解明し合成技術に帰還できれば,格段に高い効率で且つ明滅のないナノ結晶を得る可能性があり,応用面でも大きな波及効果が期待できる。
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