研究概要 |
以下の項目を3年間で遂行する。即ち,1.高品位(サイズ領域の拡大,狭サイズ分布,高発光効率)II-VI族CdX(X=Se,S,Te)ナノ微結晶の合成,2.形状制御(形状分布,球形,棒状)及びクラスター配列制御(一次元鎖,高次結晶)の手法開発,3.配位分子種(水溶性,ラベル化,反応制御)の探査,4.各種ナノ微結晶の構造評価(電顕(TEM/SEM)観察,元素分析),5.電子・正孔閉じ込め効果のフォトニクス機能計測・解析(吸収・発光スペクトル,顕微画像分光計測,赤外分光計測,寿命・過渡応答),6.III-V族・IV族系への展開,電流注入・電界発光,レーザー発振等の新機能探査。前年度は1,2及び5の基盤固めに注力し,高発光効率化,形状制御,及び顕微画像計測において特に進展を得た。今年度はその格段の高度化と共に,その成果を基礎に3及び5に展開した。配位溶媒の選別を含む成長条件の最適化からは,CdSe/ZnS/TOPO系ナノ微結晶の発光の量子効率が室温でも80%に達するに至った。又,配位分子種の適切な選択と配合・温度条件の制御により,アスペクト比が5を超えるナノ量子ロッドの作成にも端緒を得た。これは,特に正孔波動関数の形状からの制御にも関連する。現在その光学的異方性の抽出を試みつつある。単一のナノ構造系の発光応答に特有な現象の一つに,明滅現象がある。これは,連続的な光照射下に置いて,発光光子の一重項バンチング時間に比べて遙かに長い時間領域迄広く分布して見られる現象で,この原因解明は光物性物理学的にも応用上にも有意義である。ここでは,極性分子種,特に反応・成長時には極めて害の大きい水分子の存在が,滅状態の抑制に働くことを見出し,その光物理的なモデルを提案した。その計測には単一のナノ微結晶のスペクトル計測を可能にしたことも大きく貢献した。更に,液体ヘリウム温度での単一ナノ微結晶計測の整備にも着手した。分子性J-会合体との比較検討も視野に入れて,ナノフォトニクス物性計測の基盤固めを進めた。
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