研究計画で期待した以上の成果を挙げることができた。「振動励起で誘起される単一吸着分子運動の理論」において、トンネル電流が単一分子の運動や反応に関係した反応座標モードを直接励起する場合と、トンネル電子によって励起された振動モードが反応座標と相互作用して運動を誘起する場合の理論をまとめ上げることができた。さらに、今まで誰も検討することさえしなかった非弾性トンネル電流と運動や反応を誘起するための振動励起確率の微視的な相互関係を初めて理論的に明らかにした。これらの成果は6月6-10日にアメリカのBar-Haber(Maine州)で開催された第11回表面振動に関する国際会議での一般講演および9月7-11日にスペインのSan-Sebastianで開催された「分子-表面相互作用に関する国際ワークショップ」での招待講演として発表した。さらに、日本学術振興会の外国人特別研究員(欧米・短期)事業と外国入招へい事業により、それぞれ共同研究者であるB.N.J.Persson博士(ユーリッヒ固体物理学研究所、ドイツ)とN.Lorente博士(Paul Sabatier大学、フランス)を富山大学に招き、本研究課題の遂行で実りある共同研究を行うことができた。この科学研究費の配分を得たことで、我々は"走査トンネル顕微鏡を用いた振動励起で誘起される単一吸着分子運動"に関する理論研究で世界のトップにある研究成果を挙げることができたと確信している。(2003-2004の2年間で本研究成果に関して、3つの国際会議で招待講演を行った。)
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