研究概要 |
本研究では,連続発振レーザーを主に用いて,従来とは異なる高い圧力(0.9MPaまで)のガス雰囲気中でのレーザー蒸発法を検討した。蒸発カーボン種をガス中に閉じ込めた状態を形成し,高温状態の金属とカーボンの相互作用の解明,熱エネルギーおよび金属触媒によるグラファイト化作用を併用した新規物質や機能性材料形成を目的とした。 多面体グラファイト(直径100から1000nm)は高圧(0.8-0.9MPa)のArガス中でのレーザー蒸発により,90%を超える高い収率で形成できる。蒸発カーボン種をArガス中に閉じ込め,高温,高密度状態を維持することにより形成される。楕円体などを核として,多くの多面体形成が中心から外に向かって起こることがわかった。さらに,N_2またはCF_4ガス中でのレーザー蒸発の実験から,窒素またはフッ素原子を,それぞれ,3%または1%含有する多面体グラファイトを形成できることを見出した。この多面体グラファイトの形成に関しては,ケイ素原子がわずかに(1原子量%)存在すると,形成が著しく促進されることもわかった。 金属混合系での研究では,興味深い構造を持つカーボンナノホーン粒子と金属または炭化物を含有するカーボンナノカプセルの複合体が,70%の収率で形成できることもわかった。グラファイトに10種類の金属を混合させたターゲットを用いて,レーザー照射を行った。生成物の微細構造および収率の比較を行った結果,それぞれの金属でのカーボンの溶融しやすさや化合物を形成する傾向などに依存して,カーボンナノホーン粒子複合体の他,カーボンナノチューブ,炭化物ワイヤー,金属内包多面体等が形成された。レーザー蒸発法は金属や酸化物などのナノ粒子の形成法としても有用である。多層カーボンナノチューブと金属ナノ粒子との複合体の形成が可能であることを明らかにした。
|