研究課題/領域番号 |
15310073
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前川 覚 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (40135489)
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研究分担者 |
宮下 精二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10143372)
小山田 明 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助手 (60211835)
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キーワード | ナノスケール / ナノサイズ / メゾスコピック / 分子磁性体 / 量子 / トンネル現象 / スピン / 核磁気共鳴 |
研究概要 |
1.ナノスケール分子磁性体Fe8のNMRスペクトルおよび核スピン-格子緩和率を15mKの超低温まで測定し、10Kから400mKまでは温度低下に伴って緩和率は急激に減少し、400mK以下では温度に依存しないことを見いだした。400mK以上では、スピン-フォノン相互作用によるFe8合成スピンの離散的エネルギー準位間の遷移のために核スピン緩和が起こっていることを明らかにした。 2.300mK以下の温度域で、掃引折り返し磁場が準位交差磁場を通過する毎にNMRスペクトル強度がステップ的に増大することを見いだした。これはNMRを用いてミクロな観点から共鳴量子トンネル現象を初めて観測したものである。さらに信号回復率の磁場掃引速度依存性を測定し、Landau-Zenerの非断熱遷移の理論により解析を行った。 3.単結晶Fe8の容易軸方向に静磁場をかけ、300mK以下でスペクトルを測定した結果、スペクトルが磁場・温度サイクルに依存して変化し、さらに正・負磁場領域のスペクトルが非対称になることを見いだした。これらは分子スピンの初期状態、共鳴量子トンネル、核スピン緩和が寄与していると考えられる。 4.単結晶Fe8において、容易軸に垂直な方向に静磁場をかけてトンネルギャップをNMR周波数程度に広げ、NMRパルスを容易軸方向に印可することにより電子スピンを励起できるような実験条件で^1H-NMRスペクトルの測定を行った。その結果、電子スピンの励起によると考えられるNMRスペクトルの変化を観測した。 5.海外共同研究者A.Keren教授とスイスのPaul Scherrer研究所でFe8のミュオンスピン共鳴(μSR)の共同実験を行い、温度50mKでミュオンスピンの偏極度の時間変化を測定し、量子トンネリングが起こっていることをμSRでも観測した。
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