研究概要 |
本研究は、種々の機能性分子ユニットを用意し,表面での錯形成を利用した各ユニットの逐次積層化により電位傾斜や外部刺激応答性をもつ表面ナノ積層構造をコンビナトリアル化学の手法で作製し,高効率なエネルギーおよび情報変換デバイスの確立を目指している.初年度は、層間にレドックス電位傾斜を持たせた表面ナノ積層構造の構築と整流素子への応用について検討した。固液界面への金属錯体モジュールの自己組織化膜形成ならびにそれに続く逐次的な錯形成によるナノ分子積層膜の構築については検討してきた。今回はホスホン酸基をアンカーとしてもつ四脚型配位子を用いることで表面からの分子の配向を制御した。特に、構成ユニット分子の表面ナノ積層膜の構築にコンビナトリアル化学的手法の導入により、ポテンシャル傾斜を導入し電気化学的手法によりその整流作用について調べた。まずレドックス活性ならびに光応答性機能をもつ金属イオン(RuおよびOs)とホスホン酸基をもつ配位子との組み合わせから,ビス(ターピリジル)ベンゼンで架橋された二核錯体およびビス型単核錯体を新規に合成した。これらの錯体の酸化電位はRu>Osでり、またターピリジン基をもつ二核錯体の方が高電位側で酸化される。これらの酸化電位の違いは表面からの順番を変えることで電位傾斜を任意に変化させることが可能である。表面からの錯体分子モジュールの順番を変えることで積層膜内のコンビナトリアル化学が可能である.表面からITO電極||Ru-Ru(二核)|Ru-Ru(二核)|Ru(単核)とITO電極||Ru(単核)|Ru(単核)|Ru-Ru(二核)と三層積層した場合とで電気化学測定を行った場合、溶液での酸化電位がRu-Ru(二核)よりRu(単核)の方が高いので,電位勾配が生成し電子移動の方向が制御できることを明らかにした。また、平滑ITO基板上での原子間力顕微鏡による観察において、単核錯体では基板から1.6nm,二核錯体では3.5nmと錯体の分子構造モデルから予想して、分子が基板から垂直に立っていると考えた場合の高さに近い値となった。単核ならびに二核錯体の積層化に伴う吸光度の変化と積層数とは直線となることから積層が規則的に起きていることが明らかとなった。電気化学的な電流値は積層数とともに二核錯体で飽和になることがわかった。これらの知見をもとに,表面ナノ積層構造での電子ホッピングや触媒電流についても新しい知見が得られた。
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