研究課題
基盤研究(B)
Ge/Si(105)表面に対して水素吸着を試み、その安定構造をSTMによって観察した。その結果、Ge/Si(105)清浄表面の原子構造であるRS構造のダングリングボンドを終端した構造からシミュレーションによって得られるSTM像とほぼ一致するSTM像が観察された。この表面に於いては清浄表面におけるRS構造には存在するダングリングボンド間の電荷移動効果が消失しているため、清浄表面に比べてかなり歪んだ構造を取る事が明らかとなった。その歪みのため、Ge薄膜の厚みが減少し表面層にSiが混入する様になるとGe(105)表面は更に不安定化し、欠陥の生成や表面荒さの増大の原因になる事を明らかにした。さらに、Ge/Si(105)上への水素吸着においてGeとSiの交換過程が存在するかどうかをSTM-HREELS複合装置によって観察を行った結果、表面層へのSi混入量が1/4MLまでは表面を不安定化せずにGeとSiの交換過程が起こる事が判明した。Ge(105)表面構造自体については東京大学物性研との共同研究によりAFMによる表面構造の同定を行った。その結果、STMと比較してより表面構造を直接説明する高分解能像を得る事に成功し、Ge(105)表面が我々の提案した構造モデルで説明される事をより確実な物とした。また、表面上に於ける電荷移動の効果による表面ポテンシャルの変化をケルビン力顕微鏡法の併用によって原子分解能レベルで直接観察する事に成功した。また、GeSiの表面エネルギー制御を行うための新しい吸着子の可能性を探索するため、水素と同じI族に属するアルカリ金属をSi表面上に吸着させ、その振る舞いをSTMにより調査した。その結果、アルカリ金属は水素とは異なりSi原子のダングリングボンドを終端せず、表面上を常温で拡散しながら表面に対して電荷移動を起こす事が判明した。
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