研究概要 |
これまでの研究において,Cu(001)表面上で隣り合うアラニン分子のカルボキシル基とアミノ基の間で水素結合が形成されc(2x4)の吸着周期構造として安定化すること,また,この吸着構造ではカルボキシル基の2つの酸素原子はほぼ等価であり,メチル基が表面から垂直方向に向くことを明らかにした.本研究では,このメチル基の1個のHをOH基に置換したセリン分子を用いて,分子間水素結合を軸とした秩序構造に与える影響と3次元的な分子間相互作用が可能なテンプレート形成について検討した. アラニン分子と異なりセリン分子はCu(001)表面上で,吸着量,吸着温度,吸着時間に依存して多様な準安定表面構造を形成することが明らかになった.室温における吸着では,[-130]方位と[310]方位に伸びた長方形ドメインと,これらに直交する[-310]方位と[130]方位に伸びたライン状構造が観測される.時間の経過とともにライン状構造が支配的になるが,、最終的にはセリン分子4量体からなる周期構造へと変化する.この構造変化は試料温度の上昇により加速され,60℃ではセリン2分子幅のライン状構造の形成を伴って新たな4量体からなる周期構造となりステップのファセットを引き起こすことが明らかになった.このような準安定構造には,隣り合う分子のカルボキシル基とアミノ基の間の水素結合のほかにカルボキシル基とヒドロキシル基の間での水素結合の関与を考慮することが必要である.現在,赤外分光法によるアミノ酸分子の振動分光から,官能基の表面配向について検討している.
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