研究概要 |
本研究では、生体高分子の中で最も基本となる分子で、また分子内に電子吸引基と電子供与基を合わせ持つアミノ酸に注目し、その金属表面におけるキラルな自己集積構造に焦点を絞って研究した。反応は高くないがカルボキシル基とアミノ基が安定化するCuの異方性のない4回対称性の(001)表面におけるアミノ酸の吸着構造について、LEEDおよびSTMで観察し、吸着状態をRAIRSによって測定し、分子間に形成される水素結合と表面秩序構造との関係を調べた。主な成果は以下のようになる。 (1)アラニン分子はメチル基を表面に対して垂直に向ける配置でアミノ基のN原子とカルボキシレートの2つのO原子による3点吸着で安定化する。吸着アラニン分子間には、アミノ基のH原子とカルボキシレートのO原子間の水素結合によりc(2×4)の周期構造が形成され、キラルな集積構造が分離して形成される。 (2)L-セリンあ吸着では、ヒドロキシメチル基が上を向いた吸着構造と表面に向いた吸着構造の2通りの吸着構造形成が、表面構造に大きく影響し、分子間に新たな水素結合を形成することで、多様な吸着構造を形成する。吸着初期には長方形縞広ドメイン構造が形成され(2 -1.2 4)の周期構造を示す。この構造は徐々に、ヒドロキシメチル基の配置が表面方向から垂直方向へ変わることによる分子間水素結合の違いに応じて、ライン状細幅構造へと変化する。吸着量が増加すると2量体構造から、表面に向いた吸着構造のセリンが4量体で安定化した(4 - 3, 3 4)周期構造を形成する。 (3)L-アラニンがL-セリンと共吸着すると、[130]方向に配列する幅約10Åのライン状細幅構造が安定化する。
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