研究概要 |
本研究の第1の目的は,固体中および固体表面に吸着した水素を検出する手法である共鳴核反応法の感度と面内空間分解能の飛躍的向上をはかり高感度・分解能水素検出法を確立することである.感度向上のポイントは,(1)第2励起状態の活用,(2)大立体角検出器の開発,(3)背景信号の低減である.両内空間分解能の向上は1次イオンビームのマイクロ化により達成する.短焦点収束電磁石によりビーム径をφ<10μmに絞り,偏向電磁石による2次元走査システムを構築する.さらに第2の目的は,確立した共鳴核反応法を用いて,半導体ならびに酸化物試料中の微量な水素を絶対測定し,試料の電気的・光学的特性と水素との関係を明らかにすることである. 本年度は,まず第1の目的を達成するために,以下の研究を行った. (1)第2励起状態の活用:^<15>NとHの核反応は,^<15>Nのエネルギー13.35MeVに第2励起状態が存在し、検出感度に相当する共鳴幅と反応断面積との積から見積もると,第1励起状態と比較して9倍の感度向上が期待できる.荷電状態が3価の窒素イオンをターミナル電圧約2.5MeVで加速し,イオン光学系を調整することで,第2励起状態に共鳴させることに成功した.共鳴幅ならびに断面積を詳細に測定し,また非共鳴断面積も評価することで計算値通り9倍の感度向上を達成した. (2)背景信号の低減:測定感度を決める背景信号は宇宙線起源のものが主であり,測定系全体を鉛で囲うことで,背景信号を1/2程度に低減した. 続いて,この手法を活用してシリコン界面の水素の絶対値並びに深さ分布測定を行った.金属との界面形成に伴い,水素が拡散することを明らかにした.
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