研究概要 |
本研究の第1の目的は,固体中および固体表面に吸着した水素を検出する手法である共鳴核反応法の感度と空間分解能の飛躍的向上をはかり高感度・分解能水素検出法を確立することである.感度向上のポイントは,(1)第2励起状態の活用,(2)大立体角検出器の開発,(3)背景信号の低減である.第2の目的は,確立した共鳴核反応法を用いて,半導体ならびに酸化物試料中の微量な水素を絶対測定し,試料の電気的・光学的特性と水素との関係を明らかにすることである. 昨年度、第2励起状態への共鳴条件の探索に成功し感度の向上を達成した。今年度は非共鳴条件での広いエネルギー領域での核反応断面積の測定を進め、水素量定量に不可欠である非共鳴背景信号の見積もりを行った。検出角補正を行い、第2共鳴を利用した水素定量法を確立した。また、検出立体角を広げるため、2つのBGOシンチレーターを設置できるよう真空槽の改造を行い、対応する信号処理系の準備を行った。 確立した共鳴核反応法を用いて、(1)Al2O3/NiAl、(2)TiO2/Si、(3)SiO2/Siにおける水素量分析を行った。 Al2O3薄膜はモデル触媒の担持基板やトンネル素子への応用が期待されている。酸素および水分子を用いた酸化により薄膜を作製し、その表面終端構造と膜中不純物水素濃度の測定を行った。NiAl(110)表面では、水分子を用いた酸化を行っても表面・膜中には水素が取り込まれないのに対して、NiAl(100)表面では表面に単原子層程度の水素が存在することを明らかにした。さらに酸素分子を用いた酸化と比べることで、表面水素が酸化を促進することを新たに発見した。 TiO2は光触媒作用を持つことで知られている。水雰囲気下での紫外光照射効果を調べ、照射有無にかかわらず表面が水素終端されていることを明らかにした。
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