研究課題
ヘアピンDNA分子を計算デバイスとして用いたDNAC(DNA-based computing)を実現するために、昨年度に引き続き、ヘアピンDNA分子の動的特性を明らかにする研究を行った。分子計算デバイスとして使用するヘアピンDNA分子は正規直交配列から構成されている。そこで、ストップトフロー装置を用いて、31種類の正規直交配列について、相補鎖同士のアニーリング速度の配列依存性を調べた。見かけ上のアニーリング速度定数は二分子反応モデルに従う濃度依存性を示したが、その値は正規直交配列により大きく異なることがわかった。DPアルゴリズムに基づいて1本及び2本の一本鎖核酸分子が形成する二次構造の安定性を計算するプログラムを作成し、見かけ上のアニーリング速度定数と二次構造の安定性の関係を調べた。その結果、分子内二次構造だけでなく、同一配列鎖同士が形成する安定な二次構造が見かけ上のアニーリング速度定数に大きく影響することがわかった。これらの影響が小さな正規直交配列を選択してヘアピンDNA分子デバイスを構築すると、デバイスの性能を向上させることができる。そのような正規直交配列から成るヘアピンDNA分子を金蒸着基板表面に末端固定したヘアピンDNA分子メモリデバイスを作製した。このメモリデバイスはヘアピンDNA分子の静的及び動的特性を利用して動作する。蛍光を利用してメモリの書込み・消去を検出する実験を行い、特異性の高い分子アドレッシングによる書込み・消去を50回以上繰り返して行えることを実証した。さらに、このヘアピンDNA分子メモリデバイスと組み合わせて自律的に計算処理を行うための分子計算システムとして、自律的RNA配列変換関数のネットワークで構成された自律型分子計算機RTRACの開発を行った。
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Preliminary proceedings of DNA 11(A.Carbone, M.Daley, L.Kari, I.McQuillan and N.Pierce, Eds)
ページ: 397
Preliminary proceedings of DNA 11(A.Carbone, M.Daley, L.Kari, I.McQuillan and N.Pierce, Eds.)
ページ: 410
BIONICS 7月号 7月号
ページ: 58-60
BIONICS 8月号 8月号
ページ: 54-56