ジメチルアミノ基を有する特別に分子設計したアニオン開始剤を用い、ビニルフェニルスルフォキシドのリビングアニオン重合を行い、末端に1-4個のジメチルアミノ基を有し、分子量が精密に制御されたポリ(ビニルフェニルスルフォキシド)の合成法を確立した。さらにこれらのポリマーと、別途にリビングアニオン重合を用いて合成した鎖末端にカルボキシル基を導入したポリスチレンやポリイソプレンを溶液中で混合することで、イオン結合(COO^-N^+HMe_2)を経由した、新規のブロック共重合体や星型ポリマーの合成に成功した。得られたポリマーの静的光散乱より求めた分子量は計算値と良く一致し、NMR、IR、元素分析の結果より構造が確かめられた。 このようにして得られたブロック共重合体や星型ポリマーは、フィルムにキャストした後、150度で数時間加熱処理を行うと、ポリ(ビニルフェニルスルフォキシド)部分がポリアセチレンに定量的に変換される。透過型電子顕微鏡で測定するとフィルム全体に層構造が観察され、その周期は分子量によるが、30-50nmであることがわかった。従って、導電性のポリアセチレン鎖とポリスチレン鎖(あるいはポリイソプレン鎖)が分子レベルで交互に層状のナノオーダで相分離しており、ナノオーダ導電性と絶縁性からなるナノラメラ組織体が創製されたことになる。マクロ的には、層方向には導電性を示し、一方層の垂直方向に対しては絶縁性を示す異方性フィルムである。 次いでフィルムをHClのTHF溶液で処理すると、イオン結合が解離し、ポリスチレン(あるいは、ポリイソプレン)部分がTHF中に溶解し、ポリアセチレンのみで形成されたナノオーダの均一の厚みを持つナノシートの単離を行い、AFMや操作型電子顕微鏡でその存在を初めて明らかにした。現在、ブロック共重合体と星型ポリマーの構造の違いや各分子量を変えて、ラメラ構造に加え、シリンダーや球状構造の可能性の探索とポリスチレン鎖の解離溶解による、導電性のナノロッドやナノスフェアの創製を行っている。
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