研究概要 |
カーボンナノホーン(CNH)は,グラフェンシート(六員環炭素シート)が円錐状に丸まった構造を呈するもので,通常,それらが凝集して微粒子(CNH粒子)を形成する。CNH粒子は,携帯用ダイレクトメタノール型燃料電池のプラチナ触媒担持体としての利用が期待されている。現在,CNH粒子は高価な連続発振高出力CO_2レーザを用いて量産技術の確立が進められている。これに対し,本研究では,このようなCNH粒子をアーク放電によって安価にかつ量産的に連続合成する技術を研究開発することを目的とした。以下,各年度で得られた主な成果を示す。 初年度:所有のアーク放電実験装置を用いてCNH粒子の収率を約80%にまで向上する条件を見出した。その際の合成量は1.5g以上であった。この結果を元に1時間連続運転の実験装置を設計した。 次年度:連続実験装置の詳細設計と一部製作を行った。また,収率を向上させるためのアーク放電条件の洗い出し(つまり,放電条件と生成物の関係の明確化),および篩い分け等の後加工プロセスの検討を行なった。更にまた,アーク法製造のCNHの高温特性を調べ,約2000℃以上に加熱するとカーボンナノバルーンへと変形することを明らかにした。 最終年度:設計製作した連続合成装置の問題点の解決および完成を目指し,圧力制御装置,ガス導入装置,回収装置の改良を行った。また,アーク条件(電条件と生成物の関係の明確化)の確認を行った。その結果,高気圧において,目標値に近い収率を得た。しかし,アーク放電現象との関係から原料黒鉛棒の連続供給が最適でないことが判明し,装置上のメカニカルな改善点が示された。 また,燃料電池電極への応用に向けては,必ずしも,ホーン型ナノカーボンが優れているわけではなく,より好適なナノカーボンを見出すことができた。
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