研究課題/領域番号 |
15310089
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉田 博基 京都大学, 化学研究所, 助教授 (50186491)
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研究分担者 |
根本 隆 京都大学, 化学研究所, 助手 (20293946)
磯田 正二 京都大学, 化学研究所, 教授 (00168288)
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キーワード | 電子エネルギー損失スペクトル / 電子顕微鏡 / 吸収端微細構造 / 有機薄膜 / 位置分解スペクトル / 角度分解スペクトル |
研究概要 |
本年度購入した位置・角度分解スリットを1MV超高分解能分光型電子顕微鏡のエネルギー分析器に組み込むと同時に、分析器の拡大レンズ系の電流設定値を最適化することで、位置あるいは角度を分解した電子エネルギー損失スペクトルの計測を実現した。具体的には、電子顕微鏡で観察している微小領域(典型的には100nm x 25nm)をスリットで選択し、長軸方向の位置情報を保持したままそれと垂直方向にエネルギー分散を行い、位置分解スペクトルを計測する方法である。この手法の基本特性を評価するため、シリコン基板上に蒸着された鉄薄膜の断面試料について位置分解スペクトル法を適用し、薄膜及びその表面の局所状態分析を行った。その結果、鉄薄膜の表面が約6nm酸化されていることが、鉄のM2,3殻電子励起スペクトルのシフトによって明らかにされた。これは、本手法がナノスケールの局所状態分析に有効であることを実証するものである。次に、有機半導体薄膜への応用研究として、色素増感太陽電池の構成要素である酸化チタン表面に吸着したグレッツェル色素分子の検出を行った。実験では、位置分解された炭素K殻電子励起スペクトルの強度変化を解析することで、色素分子の分布状態を導出した。その結果、色素分子は酸化チタン表面に約1nmの厚さで吸着しており、色素増感作用が単分子レベルの局所的な電子構造に起因していることを明らかにした。 また、局所状態分析法構築の一環として、本年度購入した計算機を利用し、第一原理計算に立脚した吸収端微細構造の解析を開始した。電子受容体として利用されるTCNQ分子のフッ素置換体に対し、炭素K殻微細構造を第一原理分子道計算により解析した。その結果、分子内の独立な炭素位置すべての励起状態を考慮したサイト分解スペクトル計算法の重要性が明らかにされた。
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