研究概要 |
ゲノム解読のよってもたらされた数万種類に及ぶ新規遺伝子の機能解析を行うためには,多種類の遺伝子の過剰発現やノックアウトを短時間の内に効率よく行うことのできる技術が不可欠である。本研究では、RNAiを利用して多数の遺伝子の機能を細胞レベルで迅速に分析することのできるsiRNA導入用マイクロアレイの作製を目的とする。本年度は、マイクロパターン化自己組織化単分子膜上にカチオン性脂質とsiRNAの複合体を担持させるという手法を用いてマイクロアレイの作製を試みた。さらに、マイクロアレイ上における細胞へのsiRNAの導入および遺伝子発現の抑制の可能性について調査した。 マイクロアレイの作製には、まず、金を蒸着したガラス基板表面に1-ヘキサデカンチオールの単分子膜を形成させ、紫外線パターニング法によって単分子膜をスポット状(直径1mm)に除去し、多数の金スポットを形成させた。次に、これらのスポット内に11-メルカプトウンデカン酸の単分子膜を形成させることでマイクロパターン化表面を得た。緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現するプラスミドおよびEGFP遺伝子の一部と相同な配列をもつ22塩基対のsiRNA、カチオン性脂質を混合することで複合体を調製し、これを各スポットに静電的に吸着させることで担持させた。 マイクロアレイ上へのsiRNAの担持は、表面プラズモン共鳴イメージング法ならびに蛍光プローブを用いた評価法により確認することができた。また、siRNAマイクロアレイ表面上でHEK293細胞を培養した結果、siRNAが細胞内に導入され、同時に導入されたEGFP遺伝子の発現は配列特異的に、しかも、siRNAの担持密度に依存して抑制された。 以上の結果、本手法の有効性が示されたものと考える。次年度は、さらに、多種類の遺伝子発現を同時に抑制するための方法を確立し、新規遺伝子の機能解析に有用であるかを検証したい。
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