研究概要 |
RasおよびRhoファミリー低分子量GTP結合蛋白質の情報伝達反応の時間・空間的様相を、細胞内で主として1分子計測法を用いて明らかにすること、RasやRhoファミリーG蛋白質が細胞の中で、何時、何処で活性化されているか、活性化されたG蛋白質とそのエフェクターとの結合・解離のキネティクスおよび、細胞内における分子ダイナミクスなどを、我々の開発した細胞内1分子計測法等可視化解析技術を使って明らかにすることを目的とし研究を行った。G蛋白質は細胞の増殖、分化、細胞運動や細胞の形態形成において重要な役割を果たしている。 従来、Rasは細胞膜に存在し、活性化によって細胞質に存在するエフェクター分子であるRaf1を細胞膜へ移行させると考えられている。Ras, Raf1をGFP(緑色蛍光蛋白質)、あるいはその変異体であるYFPとの融合蛋白質として上皮由来細胞HeLaに発現させ、上皮成長因子(EGF)による増殖刺激前後の細胞内分子ダイナミクスを1分子計測した。多数分子平均としては、Rasの活性化によりRaf1は数十分間の一過性の細胞膜への局在変化を示す。しかし、個々のRaf1分子は恒常的に細胞質と細胞膜を循環しており、膜局在は動的平衡状態として維持されていることが分かった。Raf1の膜集積密度は、細胞内の部位により異なっており、特に集積の著しい部位から細胞の変形が起こること、Raf1の膜滞在時定数は0.4sであるが、集積部位に特異的に1.6sの時定数を持つ成分が現れることが明らかになった。 また、Rasの下流で働くRho, Racの細胞内1分子動態と活性化の計測を行うため、Ras, RhoおよびそれぞれのエフェクターであるRhotekin, PAKのGFP融合遺伝子を構築し、発現産物の生理活性を生化学的手法で確認した。
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