研究概要 |
RasおよびRhoファミリー低分子量GTP結合蛋白質の情報伝達反応の時間・空間的様相を、細胞内で主として1分子計測法を用いて明らかにすること、RasやRhoファミリーG蛋白質が細胞の中で、何時、何処で活性化されているか、活性化されたG蛋白質とそのエフェクターとの結合・解離のキネティクスおよび、細胞内における分子ダイナミクスなどを、我々の開発した細胞内1分子計測法等可視化解析技術を使って明らかにすることを目的とし研究を行った。G蛋白質は細胞の増殖、分化、細胞運動や細胞の形態形成において重要な役割を果たしている。 これまでの研究において、RasおよびそのエフェクターRaf1をGFPとの融合蛋白質として上皮由来細胞HeLaに発現させ、上皮成長因子(EGF)による増殖刺激前後の細胞内分子ダイナミクスを1分子計測することにより、Ranが細胞膜に解離時間の異なる2つの結合部位をもつことがわかっており、結合部位の片方、あるいは両方が活性型のRasであると示唆されている。細胞膜には局所的にRaf1結合密度が特に高い部位ができ、そこから仮足が形成される。本年度はRaf1の細胞膜滞在時間を決定する要因を明らかにするため、特定のエフェクターに選択的に結合すると言われるRasの点変異体遺伝子や、Raf1のRas結合部位(RBDおよびCRD)のみをGFPと融合した遺伝子GFP-Raf1,GFP-RBD,GFP-RBD-CRDを構築し、HeLa細胞に発現させた。Raf1,RalGDS,或いはPI3Kと選択的に結合するといわれる3種のRas点変異体がいずれもGFP-Raf1を細胞膜に局在変化させるが、その効率に差が見られること、野生型のRasを発現する細胞でGFP-RBDとGFP-RBD-CRDが異なった細胞膜滞在時間を持つことなどの予備的結果を得た。今後詳細な解析を行う。
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