本研究では、標的オルガネラへの薬物輸送機能や細胞質内での薬物徐放化機能を有する様々な機能性ナノ担体(粒子)を新たに設計し、薬物としてのインテリジェント化機能分子(抗原蛋白質やペプチド等)を含有したこれらナノ粒子等をバイオ・ナノ・キャリアにより細胞質内へ送達することにより細胞内におけるそれら薬物の時間的・空間的・量的な動態制御を可能とし、それに基づく次世代のナノ治療システムを構築しようとするものである。本年度は、まず細胞内に導入する機能性ナノ粒子として、表面吸着型ナノ粒子を合成した。ナノ粒子の合成は、ポリビニルアセトアミドマクロモノマーを合成した後、マクロモノマーとスチレンをラジカル共重合することでポリビニルアセトアミドナノスフェアーを作製した。その後、ビニルアセトアミドユニットをビニルアミンユニットに加水分解することで、粒子表面がカチオン性に帯びたポリビニルアミンナノスフェアーを作製した。このナノスフェアーの粒子径・表面電荷を測定した結果、粒子径308nm、表面電荷21.8mVを示す、粒子表面がカチオン性に帯びた単分散のナノスフェアーであった。一方、バイオ・ナノ・キャリアを用いて細胞質内に導入した機能性ナノ粒子の導入量並びに導入効率については、FACSを用いた評価システムを構築し、また、細胞内導入部位についてはレーザー顕微鏡を用いた評価システムを確立した。今後、今回作製したナノスフェアーに薬物を吸着させ、バイオ・ナノ・キャリアを用いて細胞質内へ導入し、今回確立した評価システムにて細胞内での薬物動態解析を行い、それに基づく次世代ナノ治療システムの構築を目指す。
|