研究概要 |
平成16年度においては、水素結合連鎖間の配列様式が制御可能なラジカル誘導体の合成研究、構造-磁性相関を研究目的とした。具体的には、分岐水素結合により集積したナノ棒磁石どうしの配列様式を合成化学的に制御するために、ベンゾイミダゾールのベンゾ環部位をフェナントレンに環拡張した骨格に置換した誘導体phenanthro[9,10-d]imidazol-2-yl nitronyl nitroxylを合成した。 結晶構造解析の結果、この誘導体は、bemzimidazol-2-yl nitronyl nitroxylと同様の積層カラム構造を形成した。SQUID磁気測定の結果、ラジカル分子間に強磁性的な相互作用が存在することがわかった。また低温域では、1次元強磁性鎖モデルに従う挙動を示した。積層カラム内の接近様式の詳細を検討し、NO結合と隣接ニトロキシル酸素原子の接近が、強磁性的相互作用を促していることを明らかにした。DFT計算もこの結果を支持した。 また、副生成物として得られるphenanthro[9,10-d]imidazol-2-yl imino nitroxylラジカルにおいても同様な積層構造体を形成することを見出した。SQUID磁気測定の結果、ラジカル分子間に強磁性的な相互作用が存在した。低温域では、1次元強磁性鎖の挙動を示した。この誘導体では、イミノニトロキシル窒素原子が、分岐水素結合に基づくカラム形成に重要な役割を果たしていた。 以上より、ベンズイミダゾールに2個ベンゾ環拡張すると、反強磁性的なedge-to-edgeの接近形態を抑制されること、強磁性的な積層カラム構造が形成されることを明らかにした。さらに、導入ベンゾ環の立体効果を利用すると、積層カラム内のSOMOどうしの接近様式を制御可能であることを明らかにした。
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