本研究は、ナノ構造物質の電気的物性を測定するための、計測要素技術の開発を行うことを目的とする。具体的には、(1)カーボンナノチューブ(CNT)プローブの製作研究、(2)プローバによるナノ領域非破壊測定技術の開発を目指す。 (1)はナノ領域での位置的干渉を取り除くための必須事項であり、CNTの高アスペクト比構造と良導電性を利用するものである。母材とCNTの接触抵抗の低減化のために、タングステン探針上にCVDを用いて直接成長を行い、その先端にCNTを成長することに成功した。また、そのCNT長も成長時間により再現性よく制御できることを見いだした。またプローブとしての性能はグラファイト表面の格子像を観察することで確認した。 (2)では、探針を試料に近づけるアプローチ機構として、接触によるダメージを低減させるための新たな手法を開発し、実際に電子顕微鏡内で作動する四探針プローブ顕微鏡を用いて、四探針法によりミクロン領域でのシリコンウェハ(厚さ0.38mm)の電気特性を調べた。その結果、理論計算に合致する実験データが得られ、本手法の有効性が実証された。 また、電位の測定方法として、接触抵抗の影響を取り除くことの可能な零位法を基本とする測気システムを構築した。CNT探針を用いて、薄膜試料に適用し、任意の位置の電位を再現性よく測定することに成功した。さらにこの方法を発展させて、非接触で電気測定を行うことを視野に入れ、バイアスプリアンプの設計、製作を行った。汎用のプローブ顕微鏡の制御電源とファンクションジェネレータを用い、独自のデータ取得と解析を行うことにより、高い精度と安定性を持つ非破壊測定システムの実現が可能となった。
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