研究概要 |
本研究の目的は,金属ナノパターンを走査電子顕微鏡(SEM)観察下のマニピュレーションにより移動させて近接させ,プラズモン共鳴構造物を作製する技術を確立することである。金属ナノパターンは電子ビームリソグラフィで作ることを想定している。また,nmレベルの微小なギャップを保っての近接は,金属パターン上にスペーサ分子層を吸着し,パターン同士をマニピュレータで押し付けることにより実現する。 平成15年度は,まず最初のステップとして,マニピュレーションにより,プラズモン共鳴構造物が実際に作製できることを確認した。パターンの代わりに直径100nm前後の銀微小球を用い,これを先端半径20?30nmの石英プローブを用いてSEM観察下で2個配列し,ダブプリズム上に銀2連球を作製した。プリズムをSEMから光学定盤に移して全反射照明法により白色光の散乱スペクトルを測定し,以前より理論計算により調べていた通り,長軸方向偏光に対して赤い散乱ピークを示すことを確認した。このピークは個々の球に励起された双極子型散乱モードの反対称結合モードである。ところが,SEM観察の前後で共鳴特性が変化する,という重大な問題が明らかになった。これは電子線照射によるコンタミネ?ションの析出に起因するものであり,このままでは計画していた通りには研究を遂行できない。そこで,(1)コンタミネーションを低減あるいは除去する方法を確立する,(2)そもそもマニピュレーションを極力使わないプラズモン共鳴構造物の設計手法を確立する,という2つの方向を検討した。前者については,本格的に取り組むには装置の抜本的な改造が必要である。しかし,一度生成されたコンタミネーションを酸素プラズマなどで除去することは可能と思われる。後者については,系統的な理論計算の結果,これまで研究されていなかった新しい構造が有望であることを発見した。
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