研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、金属ナノパターンを走査電子顕微鏡(SEM)観察下のマニピュレーションにより移動させて近接させ、プラズモン共鳴構造物を作製する技術を確立することであった。本年度は、まず、マニピュレーションにより、プラズモン共鳴構造物が実際に作製できることを確認した。パターンの代わりに直径100nmの銀微小球を用い、これを半端半径20〜30nmの石英プローブを用いてSEM観察下で2個配列した。この配列体は、長軸方向偏光に対して赤い錯乱ピークを示した。このピークは個々の球に励起された双極子型散乱モードの反対称結合モードである。ところが、SEM観察の前後で共鳴特性が変化する、という重大な問題が明らかになった。これは電子線照射による残留ガス由来の物質の折出に起因するものであり、このままでは計画していた通りには研究を遂行できない。その一方で、系統的な理論計算の結果、マニピュレーションを必要としない、新しいプラズモン共鳴構造物を発見した。そこで、次年度は、この新しい構造の設計手法を確立し、プラズモン共鳴の様子を調べることに集中した。我々が見出したのは、近接した金属ナノパターンにおけるプラズモン共鳴は、金属クラッド・誘電体コアで構成される導波路を伝搬する2次元光波の開放端での反射と解釈できるということである。つまり、大事なのは有限長の導波路を作ることであって、必ずしもマニピュレーションによりパターンを機械的に操作してnmレベルのスペーサ層を介して近接させる必要はない。合成石英基盤上に金/シリカ(厚さD=1.7〜56nm)/金多層膜を作製し、そのエッジ付近に、幅3μm、長さL(55〜495nm)の矩形共振器を残して、周囲を集束イオンビームで除去した。計算で予測した通り、共振器長が小さくなるにつれてプラズモン共鳴に対応する反射ディップが短波長側にシフトすることがわかった。
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