金属酸化物薄膜のレーザー光照射によるナノ爆発を微細加工方法として応用した、金属ナノ微粒子の3次元配列構造の高速度作製方法確立と本構造を利用した光学素子実現を最終目標として研究を行った。 H15年度は、酸化白金層と相変化膜の多層膜構造で、ナノ爆発で形成されるピットサイズ等とレーザー光の焦点位置の関係について解析し、ピット形成では酸化白金層の到達温度が重要であり、多層膜方向での光強度分布より温度感受性が高いため、焦点位置を数百nm以内で制御する必要があることがわかった。これは、3次元構造体を焦点位置の調整のみで行えることを示している。また、150nmのピット形成の条件を確認した。また、本科研費で導入した光デバイスシミュレーターを用い、ZnS-SiO2膜中に空洞ピット(270nm)を形成することで、波長800nm付近のフォトニック結晶が形成できることを確認した。また、ナノ金属微粒子を含むピットの2次元構造で、反射型の偏光素子ができることをシミュレーションで確認した。 H16年度は、本科研費で導入したナノメートル制御の精密駆動装置をレーザー描画装置(波長405nm、 NA 0.9)に組み込み、準静的に構造作製を行った。本装置で、100μm角エリアでのピット形成はできたが、レーザー光の集光度が収差等の影響で設計値どおりにならず、ピットサイズが400nmを越えてしまった。今後、光学性能を向上させ、目的の光学デバイス作製を進めたい。また、本ナノ構造をマスク層として用い、ドライエッチングで微細構造を基板に転写する方法を評価し、高アスペクト比で100nm以下のピットを大面積(直径12cm)に安定して形成できることを確認した。 これらの結果から、提案した金属酸化物薄膜のナノ爆発を用いた微細ピット構造の加工技術は、十分確立できたと考える。
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