研究概要 |
研究の出発時点から継続していた問題の2つにつき述べることとしたい. 1.空間拡大効果の表現 江戸時代においては,主に徒歩で移動していたのであるが,現在の東京23区における徒歩の移動時間分布が,現代の自動車と鉄道を用いた関東地方の移動時間分布とほぼ同様であることがわかった.このことより鉄道の空間拡大の効果はわかるのだが,より厳密に考えると,両者の分布がほぼ同じ(比率として)ということは,同じ所要時間の地点ペアーの量が全体と比べて,比率が同じであるに過ぎない.言い換えると,マクロには同程度と言えても,どの方向のペアーがより短縮(空間が拡大)したか等については別な分析を待たなければならない. 2.密度を入れる問題 当初より,2次元の任意に与えられた空間において,距離分布(移動時間分布)や通過量分布を計算する際,積分幾何学における一様な直線を介して,4次元の計算を2次元におとして計算すれば,厳密な解が得られることはわかっていた.ただこれは点の分布が一様のときであって,ここに地点の分布に濃い薄いを入れて密度を導入する場合,解決すべき問題が多くあった.一つは,局所的には濃い薄いがあっても大局的には一様とみなせる場合で,これについては数値的にどの程度の濃淡であれば一様とした計算と同じであるか明らかになった. もう一つは,何らかの意味で密度がある種の関数に従う場合であるが,地域を円,密度が円の中心からの距離の指数関数の場合と単純化した場合でさえ,数値計算はともかく,一様のときのように関数で表わすことはできなかった.
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