研究概要 |
リモートセンシング技術の発達により,都市部における災害危険度評価や自然災害による被害把握に利用する試みがなされてきている.とくに地震等の災害直後における早期被害把握は,緊急対応や応急復旧計画の立案のためにきわめて重要である.2001年10月に打ち上げられた商業用人工衛星QuickBirdは,最大で0.6mの地表分解能を持ち,都市部の画像では構造物の形状が詳細に識別できる.したがって,災害直後にこれらの高解像度衛星画像を利用し,建物や土木構造物の被害を把握することができると考えられる. そこで本研究では,2003年5月21日に発生したアルジェリア地震の主な被災地であるブーメルデス市とゼムリ市を捉えたQuickBird衛星画像を用いて,建物被害がどの程度把握できるのか分析を行った.地震2日後と地震1年前の画像から目視により被害を判読した結果,崩壊(Grade5),部分的崩壊(Grade4)は良好に分類できたが,一部損傷・瓦礫(Grade3)は困難であった.被害率分布より,川沿いの地域の被害が大きいなどの被害の特徴を把握することができた.また,現地調査における微動観測の結果と比較すると,地盤条件が良好と評価された地域の被害率は比較的小さく,地盤条件が悪いと評価された地域の何箇所かは被害率の大きい地域であることがわかった。このことから,局所的な地盤特性による地震動の増幅が建物被害に影響を与えたと考えられる. また,被災者用テントも画像から読み取ることができた.今後,被害把握や復旧計画支援への実用化に向けて,地震1ヶ月後の画像との比較,現地調査による被害率との比較などを行い,今回の結果の精度を検証する予定である.
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