研究概要 |
本年度は,まずは,音響システム全体のパワー効率改善を計った。ふつう,超音波エミッタは容量性の負荷となる。特に,共振周波数を外れた周波数領域では容量性が大きく,共振周波数を中心にして周波数を振らす包絡変調(AM)では,無効電力が大きくなり,これはパワーアンプ内での電力損失が増すことを意味する。無効電力を減らす方法として,ここでは超音波エミッタにコイルを並列接続して力率改善を行うこととした。実験によれば,共振周波数近傍を除いて全体的に無効電力を1/4〜1/3に減らすことが確認できた。これによって,従来の直接接続よりも電力損失が大幅に減ることが予想され,システム全体で考えたときに,パワー変換効率が改善できる基礎データを得た。次に,視覚障害者用横断歩道の音響ユニットに,試作した音響システムを適用した場合の歩行データをまとめた。具体的には,6名の建聴な視覚障害者の協力を得て,現用のスピーカと試作したスピーカーの俯角を16°,24°,41°の3段階に変え,それぞれの俯角で2回の歩行を行い,各スピーカーについて計36回の歩行データを得た。これらの歩行において,現用のスピーカーでは横断歩道からのはみ出し回数は7回,本スピーカでは2回であり,後者のスピーカでは回数が大幅に減った。したがって,超指向性スピーカが歩行の誘導に有効に働いているとの結論に至った。
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