研究概要 |
従来,技術システムにおける爆発リスクの算出においては,爆発の発生確率とそれによる威力の解析を行い,双方をF-N曲線やリスクマトリクス等で評価し,リスク低減策の検討が行われてきた。そこではたとえばTNT(トリニトロトルエン)を基準とした爆発発生確率や爆発威力の推定が行われてきた。しかし,近年では製品の高付加価値化の要求に基づいて,特殊化学品のような爆発特性未知な新規物質や起爆や取扱条件等によって異なる反応性を示す物質の導入が多く,個々の物質特性に基づいた適切な評価を行うことが不可欠となっており,新たな基本概念,爆発理論に基づく爆発現象のリスクアセスメントへの導入が強く求められている。 本研究においては,エネルギー物質への衝撃エネルギーの付与による反応開始から,反応進行,定常爆轟に至る超高速のプロセスを,高分解能ピエゾ抵抗圧力素子を利用した計測システムにより爆轟速度,圧力に関する実時間計測を行い,計測結果の現象解析と超高速度カメラおよび高速度ビデオ撮影による凍結画像により確認し、それらを基に極限反応の機構に関する分子論的解釈とモデルの確立を試み,その上でリスクアセスメントシステムへの導入を図ることを最終目標としている。初年度にあたる平成15年度の成果は以下の通りである。 典型的な非理想爆轟挙動を呈する産業爆薬として,硝安油剤爆薬(ANFO)およびエマルション爆薬を試料とし,起爆薬による点起爆と衝撃波レンズを用いた平面衝撃起爆を行い,エネルギー入射から起爆に至るまでの試料内圧力履歴および,衝撃波通過時間の実時間計測システムの開発を行った。 また,ナノ秒オーダーでの計測が可能なマンガニン圧力センサーにより,定常爆轟伝播中の爆轟波面の圧力履歴を計測し,同時に実施する超高速度カメラによる爆轟波面の曲率に関する情報から,爆轟パラメータと反応率との相関について考察を行った。
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